オーバーツーリズムとは?原因や対処法、実際の事例をわかりやすく解説!

2021/07/29

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八重洲2丁目8−7 福岡ビル 4F

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観光業界における新型コロナウイルス感染症の影響は大きく、2020年4月の訪日外国人旅行者数は前年同月比で-99.9%を記録しました。



その一方で、米国の大手旅行誌が発表した「世界人気都市ランキング」では京都が初の1位に輝くなど、日本が観光立国であることには変わりありません。


旅行客による観光地での消費は、地域経済を支える重要な柱といえます。



しかし極端な訪問客の増加は、「オーバーツーリズム」としてさまざまな問題を招いている側面があることも事実です。



今回はそのオーバーツーリズムの原因や対処法について、詳しく解説します。

 


オーバーツーリズムとは?


「オーバーツーリズム」とは、直訳すると「過剰な観光客」という意味です。



観光客の極端な集中により、地域住民の日常生活や自然環境に、多大な悪影響を及ぼしている状態のことを指します。



外国人観光客をはじめとした旅行者の誘致が、「観光公害」と表現されることもあります。



本来は地域経済の活性化につながることが、観光地にとって負荷となりマイナス効果を与えてしまうという、なんとも悩ましい問題であるといえるでしょう。



オーバーツーリズムの深刻化で起きること


オーバーツーリズムが観光地にもたらす具体的な課題は、さまざまです。



多数の車両が乗り入れることによる交通渋滞の悪化や、無断駐車・騒音問題・ゴミ問題といった、その土地に住んでいる人々の生活に及ぼす影響がまず挙げられるでしょう。



さらに度を超えたマナーの悪さによる自然環境の汚染、文化財の損傷など取り返しのつかない事態を招くものまで、数えきれないほどあります。


また上記のような影響により、「町並みが汚い」「バスが満員で乗れない」「地域住民に歓迎されない」といった、旅行客が得られる体験の質が著しく低下してしまいます。



観光地そのものの満足度や、価値すら低いものになってしまうことが懸念されるでしょう。

 


オーバーツーリズムの原因は?


「オーバーツーリズム」は、観光地が受け入れ可能な上限を超える観光客数により、弊害として発生してしまうものです。



とくに近年においては、SNSの普及によって個人の発信力が高まっていることも要因のひとつとして挙げられます。



魅力的な写真や口コミの投稿により、受け入れ体制が整っていないような地方までもが突如として注目を浴び、オーバーツーリズムへとつながりやすくなっています。


一個人により全世界へ情報が拡散されるようになった現代において、情報を広まりすぎないようにコントロールすることはもはや不可能です。



情報を元に行動する多くの旅行客をコントロールする仕組みづくりにこそ、重点を置くべきだといえるでしょう。



オーバーツーリズムの対処法


例に挙げたさまざまな悪影響は、地域住民にとっての不満を高めてしまうばかりか、住民の他自治体への流出という事態すらも招きかねない重大な問題です。



そんなオーバーツーリズムを対処するにあたり、具体的にどのような方法が考えられるのでしょうか。



次では、オーバーツーリズムの対処法を詳しく解説していきましょう。


 


観光客数を制限する


まずは、入場規制や交通規制などによって、観光客の行動を制限する方法です。



観光地への立ち入りに一定の規制を設けることにより、自治体などが直接的に観光客数をコントロールできます。



本来のキャパシティを超過してしまう事態を未然に防ぎ、住民にとっての暮らしやすさの改善が見込めるでしょう。



ただし、観光客に対しては事前予約などの手間や、自由な行動の制限などによって悪印象を与えかねないという一面も、理解しておかなければなりません。



近隣自治体と協力して観光客を分散させる


次に、近隣に位置する自治体へ、観光客を分散させるという対策が挙げられます。



たとえば、周辺の観光資源への誘導を図り、シャトルバスの運行や入場料の割引といった施策を打つことで、著名な観光地への集中を避けられます。



新たな動線を設計することにより、今まで近くの人気観光地によって埋もれていた土地への誘客につながる相乗効果も期待されるでしょう。




宿泊税・入浴税などを導入する


宿泊税や入浴税の導入も、オーバーツーリズム対策のひとつです。



施設の多言語化や、公共交通機関の混雑緩和をはじめとする、旅行客の受け入れ対策に税収をあてることによって、環境整備を整えられるようになります。



ただし税金は、ビジネスでの利用や、教育旅行など観光需要とは異なる性質の利用客からも一律に徴収するので、結果として非課税の周辺自治体へと客足が流れてしまうことも懸念されるでしょう。



宿泊施設からは、導入に反対する意見もあります。



行政としては、オーバーツーリズムの抑制と旅館・ホテルの集客維持、そして財源確保のバランスを保つ舵取りが重要です。

 


手ぶら観光を推進する


訪日外国人観光客は、その多くが個人での旅行です。



自らたくさんの荷物を持って移動すると、電車やバスにおいて広いスペースが必要となり、結果的に公共交通機関の混雑を招きます。



そこで国土交通省では、「手ぶら観光」を推進しています。



「手ぶら観光」を広めることにより、混雑緩和のみならずインバウンド旅行者の利便性が向上するでしょう。



満足度の高い観光地として定着することが期待される取り組みです。



国際認証制度を導入する


持続可能な観光に関する、共通の理解を得られるようにするための努力基準である、「GSTC基準」の導入も対処方法に挙げられます。



「最低限遵守すべき項目」と位置づけられるGSTC基準は、観光地域や事業者それぞれに向けた指標があります。



構成されている4つの柱は、「効果的な持続可能計画」「地域コミュニティにおける社会経済的な恩恵の最大化」「文化遺産への悪影響の最小化」「環境負荷の最小化」です。



このような制度の導入により、地域や事業者全体で共通の目標に向けた行動計画を策定し、足並みをそろえて実行できるのではないでしょうか。




日本国内や海外で行われているオーバーツーリズム対策の事例





ここでは、実際にオーバーツーリズムが発生してしまっている地域が実施している、対策の事例を解説します。



日本政府が行っているオーバーツーリズム対策


・「持続可能な観光推進本部」の設置



2018年に政府は、「外国人観光旅客の集中による観光地域の混雑」「外国人観光旅客の増加による住民の生活環境の変化」「外国人観光旅客のマナー」といった、観光地における課題を把握します。



そこで対応策を検討するために、「持続可能な観光推進本部」を観光庁に設置しました。



この対応により、旅行者のニーズと地域住民の生活環境との調和、両者が共存する地域づくりが期待されています。



・「住宅宿泊事業法(民泊新法)」の施行



インバウンド需要の急速な高まりを背景に、いわゆる「民泊」を実施する事業者も増加しました。



しかし民泊には安全面・衛生面の確保や、近隣トラブルといった課題も多く、また観光旅客の形態も多様化しています。



そこで平成29年6月に「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が施行され、健全な民泊事業の推進が図られました。



京都市(京都府)


日本を代表する観光都市であり、国内においてもとくにオーバーツーリズムに悩まされてきたのが京都市です。



市民生活実感調査における「京都は、市民にとってくらしやすい観光都市である。」という問いに対して、「どちらかというとそう思わない」または、「そう思わない」と回答した市民の割合は、以下のとおりです。



・平成26年度12.8%

・令和元年度32.7%



上記のように急激な増加傾向にあることからも、喫緊の課題であることが読み取れます。


京都市では、2019年からオーバーツーリズム対策に関するプロジェクトチームを立ち上げました。


ICカードの活用や、前乗り後ろ降り方式の拡大によるバスの混雑対策、観光客の位置情報を活用したAIによる混雑予測の発信など、4項目50事業の充実・強化に取り組んでいます。



鎌倉市(神奈川県)


同様に鎌倉市では、ホームページやTwitterにおいて隠れた名所の情報を発信することで、分散型観光を推進しています。


そのほか、「パーク&ライド(パーク&レールライド)」の実施をはじめました。


自家用車での移動から公共交通機関への転換を図り、交通渋滞の緩和を促しています。


観光客に起因される渋滞により、窮屈な生活を強いられている地域住民にとって、パーク&ライドは具体的な効果が望まれる施策になるのではないでしょうか。



台東区(東京都)


上野・浅草など由緒ある観光地に代表される台東区でも、インバウンド旅行者によるトイレの使い方や、食べ歩きゴミのポイ捨てといったトラブルが起きていました。


そこで、外国人旅行客に向けてさまざまな言語やイラストで、トイレの利用方法などのマナーに関する内容を掲示・配布する、マナー啓発の取り組みを実施しています。




海外で行われているオーバーツーリズム対策


世界遺産にも登録されているイタリアの水の都、ヴェネツィアのオーバーツーリズム対策をご紹介しましょう。



ヴェネツィアでは、1990年代後半から世界各国の旅行者が増加したことによって、地域住民が生活している場が観光地化してしまい、住民にとっての暮らしやすさが失われていきました。



さらに外国資本の流入もみられるようになったことで、住宅の価格が高騰してきます。



その結果、ヴェネツィア島部の居住人口が、約18万人から約5万人へ大きく減少するという結果を招きました。


これらの重大な問題点を受けたヴェネツィア市では、旅行者に人気の地区において予約制での入場を試行しました。



また、観光客を受け入れる施設を新規で開設する際は行政の許可を必須とするなど、観光産業の犠牲になっていた住民サービスにおける問題点の対処に取り組んでいます。




旅行者の受け入れと並行してオーバーツーリズム対策していくことが重要


ここまでご紹介したとおり、オーバーツーリズムはさまざまな課題を抱えています。



しかし行き過ぎた対策をしてしまうと想定以上に旅行者数を減らし、今まで観光客の消費に頼ってきた地域経済が立ち行かなくなるような事態を引き起こすかもしれません。



キャパシティに見合った旅行者数を目標として、受け入れと対策の両立こそが観光地に必要とされる条件といえるでしょう。



まとめ


オーバーツーリズムが顕著な観光地は、やはり観光客や住民の満足度が低下するという悪循環に陥ってしまいます。


ポストコロナの時代を見据えて、今からその土地に合ったオーバーツーリズム対策の仕組みをつくり、いち早く実行することが求められます。


「また来たい」「住み続けたい」と思えるような、魅力的なまちづくりを目指しましょう。

T A G
#世界遺産
#オーバーツーリズム
#鎌倉市

記事の投稿者

みんなの観光協会<第3編集部>

山口県出身。エスビージャパン株式会社プランニング部兼九州プロレス公式レフェリー。 趣味は地図を読み続けること。場末の飲み屋街・老舗食堂・田舎の商店街・古い駅舎を愛し、地図を片手に日々、妄想の旅を続けている。

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