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地域ブランディングとは?取り組む上でのポイントと成功例を紹介
地域ブランディングは地域を活性化するために注目を集める手法の1つです。
しかし漠然と言葉は知っているものの、具体的にどの様に地域をブランディングすれば良いのか分からずにお困りではないでしょうか。
この記事では地域ブランディングへの取り組み方と、実際の成功例を紹介します。
地域ブランディングとは
地域ブランディングとは、その地域特有の魅力を広く発信し、良いものとして認知してもらうことでブランド化を図る取り組みのことを意味します。
ブランディングは名産品や観光資源といった具体的なモノである場合もあれば、町や地域そのものをブランド化し、「○○といえば~」といった形で町の名前からすぐに特定のイメージを連想できるようにする場合もあります。
少子高齢化が進む中での地方都市への人口一極集中に伴う地方の過疎化、地場産業の衰退による税収の減少、アジアを始めとする海外からの安価な製品輸入による特産品の競争力低下など、地方が様々な課題を抱えるようになった昨今では、人口増加や産業の振興などによって地方を活性化する方法の1つとして、地域ブランディングの重要性は増しています。
それでは地域ブランディングを行うためには、具体的にどうすればよいのでしょうか。
次の項からは、地域ブランディングへの取り組み方を紹介していきます。
地域ブランディングを行う際のポイント
地域をブランディングすることは決して簡単ではなく、地方創生や地域おこしの一貫として地域ブランディングに取り組んでみたものの、うまくいかずにいつの間にか立ち消えとなってしまったという様なケースは珍しくありません。
ここからは地域ブランディングの成功のために押さえるべきポイントを4つ紹介します。
地域ならではの特色を発信する
地域ブランディングを行う上で最も重要なことは、その地域ならではの魅力的な特色を発信するということです。
いくら手広く発信を行ったところで、その中身に魅力を感じ、共感してもらえなければブランド化することはありません。
地域ブランディングに限らず、一般的なブランディングで考えてみてください。
例えばある商品が機能や価格、背景にあるストーリーなどに関して、全く特徴がなかった場合に、いくら宣伝を頑張って広く認知を獲得したとしても、ブランド化するでしょうか。
地域ブランディングについてもこれと同様で、他の地域にはない、その地域ならではの強みを発信しなければブランディングすることはできません。
こう書くと魅力的な歴史や文化、特産品や自然環境などを持った地域でなければブランディングが難しいのではないかと思われるかもしれません。
しかし一般的に分かりやすい観光資源などがなくても、必ず地域に固有の特色というものがあるはずです。
それを洗い出して深堀りし、どの様な形で発信するのかを工夫することで、どんな地域でもブランディングができる可能性はあるのです。
実際にその地域に済んでいる人ほど固定観念に囚われがちな傾向がありますが、フラットな視点から自分たちの地域を分析し、ブランディングできそうな地域資源の洗い出しを行ってみてください。
ニーズに基づいたブランディングを行う
地域ブランディングを行う際にありがちなミスが、「これを発信したい」という考えが先行してしまい、実際の市場や消費者のニーズからズレてしまうというパターンです。
本来ブランディングというのはターゲットとなるユーザーのニーズありきで考えなければならないものです。
しかし、流行の特産品やゆるキャラを真似してみたり、その地域の内側から見た固定概念に囚われてしまったりといったことが原因で、企画だけが先行してしまった結果、誰にも響かないという結果に陥ってしまうケースが非常に多くなっています。
そのため、1つ上の項で解説した発信する特色の候補の洗い出しが完了したら、必ず市場や競合の調査を行い、それらに対してどの様なニーズがあり、どの様に発信すれば届けたいターゲットに届けることができるのかをしっかりと練った上で、ブランディングの方向性を決めるようにしましょう。
「モノ」だけではなく「コト」を意識する
地域ブランディングというとやはり特産品や観光地といった「モノ」を思い浮かべる人が多く、企画する際にもアイデアはモノに偏りがちです。
しかし近年では人々の消費行動に変化が表れており、モノを消費することに対して魅力を感じる人が少なくなり、反対に何かを体験する「コト」の消費に対するニーズが高まっています。
この様な背景を踏まえ、ブランディングの際にはモノだけではなくコトも意識した上で企画を行うと良いでしょう。
「この地域ではこういった体験ができる」というイメージを明確に持ってもらうことは、地域ブランディングのために有効な方法の1つです。
関係者で一体となって取り組む
地域ブランディングを行う上で障害になりやすいのが、関係者の意識や目的が統一されていないことが挙げられます。
例えば企業がブランディングを行う場合、企業という組織は利益の最大化を目的としているため、取り組む主体は一枚岩となり、目的や取り組み方の意思統一も容易です。
これに対して地域ブランディングの場合には行政と地域団体、住民などブランディングに取り組む主体が複数存在し、さらにその目的も立場によって、特産品を作りたい、観光客を増やしたい、雇用を創出したいなど統一されていない場合もあるでしょう。
しかし、地域ブランディングの実現のためには行政主導の働きかけのみによる実行には限界があり、また持続的な取り組みが必要になることから、関係者全体で一体となる必要があります。
そのため、地域ブランディングに取り組む際には、地域内での体制を整えることにも注力することが重要です。
地域ブランディングの成功例:安心院の農村民泊
最後に、実際に地域ブランディングに成功した実例として、大分県宇佐市安心院町の農村民泊を紹介します。
昨今全国的に人気を博す「農村民泊」は、実際に農村の民家に宿泊し、農村での暮らしを体験できるツアーですが、そのパイオニアとして確固たる地位を築いているのが安心院です。
安心院は元々ぶどうが有名な地域で、安心院産のぶどうを使った「安心院ワイン」が名産品でした。
しかし高齢化と若者の流出によって過疎化が進み、ぶどう畑の減少などの問題が深刻に。
この様な状況の中、安心院に活気を取り戻すための取り組みとして、ヨーロッパで行われていた都市部の人間が余暇を農村で過ごすという「アグリツーリズム」を参考に、「都市と農村の交流」をテーマとして始まったのが農村民泊です。
アグリツーリズムについての研究を行うために農家のメンバー8名によって1992年に発足された「アグリツーリズム研究会」は、1996年には農村だけでなく町内外の人間を交えた「安心院グリーンツーリズム研究会」に発展し、2004年にはNPO法人化し、安心院での農村民泊ツアーの提供を開始しました。
利用者は1日1組の家族のみに限定し、利用料金は1泊朝食付きで大人5000円、子供3000円です。
宿泊する農家によって、ピザ焼きやパン焼き、こんにゃく作りや竹細工作りなど異なる体験をすることができます。
そして安心院の農村民泊最大の特徴は、お客様ではなく家族として迎え入れられるという点です。
安心院には「1回泊まれば遠い親戚、10回泊まれば本当の親戚」という言葉があり、本当にそのとおりにもてなされることから、安心院町の一員になった様な体験をすることができるのです。
体験できる内容の豊富さおもてなしの理念に対する共感からリピーターも多く、1996年には約80人程度だった安心院への来訪者は、現在では年間1万人を超え、安心院はまさに当初掲げた目的の通り、都市と農村が交流する場として、地域をブランディングすることを達成したのです。
まとめ
地域ブランディングへの取り組み方と安心院の成功例を紹介しました。
地域ブランディングは地域を活性化する上で非常に有効な施策の1つです。
過疎化や経済の落ち込みを打開するために地域ブランディングへの取り組みを検討している方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
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