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地方創生における雇用創出の重要性とは? 過去の事例や取り組み方、課題を解説
地方創生において、雇用創出は極めて重要なテーマです。人口流出による過疎化は地方自治体にとって大きな課題の1つですが、魅力的な雇用を増加させることにより地元での就職者を増やし、都市から地元に戻るUターン就職を生み出せる可能性があります。
この記事では、地方創成における雇用創出の重要性や課題、取り組み方について触れ、過去の事例をご紹介します。成功例を知ることにより、経済を取り巻く環境を大きく改善することも可能ですので、ぜひ参考にしてみてください。
地方創成における雇用創出の重要性
地方自治体にとって、大きな課題として圧し掛かるのが人口流出です。人口が減り、過疎化が進み、魅力的な施設や生活を支える店舗等が減少した結果、経済が落ち込むという悪循環を招いてしまいます。このサイクルを止めるために、最重要ポイントとなるのは雇用創出です。
地元での雇用が増加すれば、若年層が都市部で就職する必要性が減り、人口流出を抑えることができます。既に都市部で就職を果たしている人物にとっても、帰郷を希望している場合には、Uターン就職による人口増を生み出せる可能性も生まれます。
雇用創出による効果は、地域にあるさまざまな企業にも波及します。企業誘致によって大規模な雇用が生まれると、会社の近くにある飲食店や小売店への多くの来客を見込めます。誘致した企業と地元の既存企業の結び付きが強くなれば、既存企業の力も増し、経済も回復に向かうと考えられるのです。
雇用創出に向けて自治体が抱えている課題
雇用創出に向けた課題として最初に挙げられるのが、雇用の種類の少なさです。地方都市においては、福祉や教育、文化、環境保護といった分野で既に一定の雇用が認められますが、そこから派生する新たなタイプの職業分野を創出することがポイントになります。
具体的にはNPO法人のスタッフや労働者協同組合の組合員、コミュニティ・ビジネスにおける雇用機会増加などが課題として挙げられます。単純な会社員としての働き方だけに注目するのではなく、新たなビジネスモデルによって生まれる新しいタイプの職業を増やすことに意識すべきと言えます。
人材育成も課題の1つです。例えば、古くからの住宅を水回り等も含めてリフォーム・リノベーションできる技術者やデザイナーを育成することで、地元で活躍できる人材を確保できます。地方創成の内容に合わせた接客・製造スタッフを育成すれば、より持続可能な雇用を生み出すことができます。
地方創成における雇用創出の事例を紹介
地方創成において、雇用創出は極めて重要なポイントになりますが、具体的にどのようにすれば雇用を生み出すことができるのか分からないというケースが多いはずです。そこでここからは、雇用創出の事例をご紹介します。参考にできる要素は取り入れ、経済を回復へと向かわせましょう。
コミュニティ・ビジネスにおける雇用創出
福祉や教育、環境保護をはじめとする地域密着型のビジネスを総称して「コミュニティ・ビジネス」と呼んでいます。従来までは、これらのビジネスを公共団体に依存する自治体が大多数を占めていましたが、近年では住民が主体性を持って活動することが多くなり、労働力の確保が容易になっています。
例えば農業体験に代表される、その地域でしか経験することができないイベントにより観光客を集めるという手法は極めて有効です。それに合わせて伝統工芸品を販売したり、地産品を多用したレストランを展開したりという形で、インバウンドを含む観光客を増やせる可能性も高まります。
新潟県が支援を実施中の「都岐沙羅パートナーズセンター」は、コミュニティ・ビジネスにおける中間支援組織として活動しています。ここでは地域内での事業興しの案を公募しており、精査した上で採用案を決定し、状況に応じてアドバイザー派遣等を通じて支援活動を行っています。
このような形でコミュニティ・ビジネスのスタートアップを支援することにより、新事業誕生に合わせた雇用を創出することが可能です。また、アイデアを公募するというシステムを採用することで住民の意識や関心を高めることもでき、地域の魅力度向上につなげる効果も生み出しています。
東京都三鷹市が支援している「シニアSOHO普及サロン・三鷹」も、コミュニティ・ビジネスを活用した雇用創出成功例の1つです。三鷹市には都心のベッドタウンという特性があり、地域住民には企業からの離職者が多いという特徴を持っています。こうした人々を地域資源として生かす手法も有効です。
シニアSOHO 普及サロン・三鷹では、離職者に対してパソコン教室を開き、そこで基礎知識を学んだ人物が新しい参加者にパソコンを教えるというサイクルを繰り返しています。パソコン講師として活動する人物や、訪問サポートを実施できる技術者を育成することにより、雇用創出を実現させているのです。
こうしたサイクルによって、加速度的に進むIT社会に適用できる住民を増やせるというメリットも得られます。三鷹市による事例は、地域の特性を整理することで新たな雇用を見込むことができるという好例です。地方都市のみならず、都市部の小さな自治体でもアイデア次第で雇用創出を行えます。
環境関連分野における雇用創出
大量生産・大量廃棄を繰り返す社会構造により、地球環境は大きく悪化しています。これらの問題点には国際的な関心が高まっており、環境改善に向けた取り組みに興味を持つ日本人も増加しています。地方自治体をあげて対策することで、公共投資からの雇用創出を見込むことが可能です。
環境ビジネスにおいては、製造業あるいは建設業を供給側として見込むこともできます。これらの業種が事業内容を拡大されることにより、工場や研究所等の増設に伴う雇用創出を見込めます。研究職に従事する人物は四年制大学卒業者が多く、正規雇用者の割合が高まることにも期待できる点もメリットです。
大規模な公共投資の例としては、東京都が実施している「大深度地下構想」があります。これは山手線沿線の大深度下にリング状の貯水装置を設置し、水源として供給するという構想です。遊水地としての役割も果たすため、都心で懸念される洪水などのトラブルに対処する役割も含んでいます。
この計画による経済波及効果は非常に大きく、工事の実施による雇用創出に加えて、装置の維持に伴うビジネスも誕生します。下水処理や処理装置に関連するビジネスを含め、多方面で経済に貢献できるビジネスモデルとして期待できます。
水の供給による利益の確保など、経済を回しながらも地域環境の向上を目指せることがメリットです。インフラが整うことによって地域環境が向上し、魅力的な町作りを進められます。これにより人口流出にも歯止めがかかり、観光客の増加といった効果を生み出すこともできるのです。
まとめ
人口流出による過疎化や景気悪化を防ぐためには、雇用創出に力を注ぐことが最大の解決策につながります。新しいビジネスモデルを確立することや、人材育成に乗り出すことによって、魅力ある雇用を創出することが可能です。
ここで紹介した新潟県や三鷹市による取り組みを見ても分かるとおり、地域の特性を生かしたビジネスを生み出せます。インフラを整えながら経済を好循環へと導くことも可能であり、アイデア次第で多方面への経済波及効果を生み出すこともできるのです。
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