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デジタルトランスフォーメーションとは? 観光業における概要や事例をご紹介
新型コロナウイルスの発生と蔓延により、観光業は大幅な軌道修正を強いられています。そしてそのコロナ禍において、多くの観光関連業者が行っている改革の1つが「デジタルトランスフォーメーション」です。
観光業におけるデジタルトランスフォーメーションとは、一体どのようなものなのでしょうか。この記事を通じてデジタルトランスフォーメーションの概要や対応可能な取り組み、そしていくつかの具体的な事例をご紹介します。
デジタルトランスフォーメーションとは
デジタルトランスフォーメーションは、2004年にスウェーデンにあるウメイ大学のエリック・スターマン教授によって提唱された概念です。ICTの浸透により、観光業者そのものが業務を効率化させたり、QOLの向上を図ったりすることを目指します。
2018年には、経済産業省が「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」を制定しました。ここでは、「データとデジタル技術を活用してビジネス環境の変化に対応し、顧客ニーズをもとにサービスの変革を行うこと」といった定義が示されました。
デジタルトランスフォーメーションとデジタル化には違いがある
デジタルトランスフォーメーションはデジタル化と混同されることもありますが、この2つには明確な違いがあります。前者がデジタル技術を活用そのものであることに対し、後者はデジタル技術を生かしたビジネスモデルの創出を目指すものになるのです。
この特性を考えると、デジタルトランスフォーメーションは、既にデジタル化が行われていることが前提でなければ成り立たないことが分かります。デジタル化の末に待ち受けているものがデジタルトランスフォーメーションということになるのです。
観光業におけるデジタルトランスフォーメーション
東京オリンピックの2020年開催が決まり、インバウンドも順調に増え続けていた最中に発生した新型コロナウイルスは、観光業に大きなダメージを与えています。この状況を脱するため、既に大手企業を中心にデジタルトランスフォーメーションが実行されはじめました。
2020年11月現在、ようやくワクチン開発にも進展が見られましたが、まだ具体的な配布時期や効果については不透明なままです。Go Toトラベルキャンペーンは成果を上げているものの、一部では批判が強く、自粛ムードは依然として高いままになっています。
デジタルトランスフォーメーションは、観光業においてどのような効果や影響をもたらすことができるのでしょうか。現時点で行われている取り組みについてご紹介し、その中身を詳しく解説します。
AIによる旅先の提案
旅行者にとってなかなか決断できないのが旅行先の選択です。国内にするか海外にするか、国内に決めた場合は都市なのか地方なのかなど、旅行は選択の連続になります。それをAIの力によってサポートするという取り組みが生まれ始めているのです。
AIは、個人の趣味など基本的な情報をベースにしながら、その瞬間の心情を感じ取って旅先の提案を行います。旅行者にとってはこれが最後の一押しとなりますし、旅行すること自体が未確定な状態でサービスを活用した層に対しても訴求することが可能です。
しかもAIは、自宅における仮想体験等の機会も提供し、消費者の想像力を掻き立てます。旅行中の使用エネルギー量などの指標を提示したり、気候条件の良い旅先を案内したりなど、旅行による満足度を高めるための提案も行えるのです。
オンラインツーリズムなど新たな形の旅行の実現
コロナ禍において一躍注目される存在になったものがオンラインツーリズムです。パソコンやスマホ、タブレットなどの端末を通じて現地とインターネット通信を結び、中継映像を見ることによって旅行気分を味わえるという企画になります。
オンラインツーリズムの魅力は、自分自身で旅行中の行き先を指示することや、現地のガイドや住民と会話ができることです。YouTubeやテレビ番組を視聴しているだけでは伝わらない臨場感を味わうことができることが人気の秘密になっています。
単純に中継を結ぶだけではなく、現地のお土産を参加者の自宅に送付するなどの企画を打ち出す事業者も増加中です。オンラインの旅行ということもあり低価格化に踏み込みやすく、これまで旅行に前向きではなかった層を取り組むことにも成功しています。
多様性を重視したホテル経営
ホテル経営に関しては、顧客の情報を分析することによって、これまで以上に多様性を重視する運営方針に切り替えやすくなっています。これによりシングルで子育てをしている層や、一人旅をする層を取り込みやすいことがメリットです。
コロナ禍においては、旅行の少人数化が進むことが予想されますので、デジタルトランスフォーメーションはこれらのデータ解析に有効と言えます。また、生活困窮者の受け入れなど、慈善活動に踏み込むことも企業イメージ向上に役立つでしょう。
IoTの活用による輸送手段の拡充
IoTにおいて特筆すべきなのは、自動運転をはじめとする技術向上による輸送手段の変化です。5Gの本格普及もIoTの発展に大きく貢献することとなり、観光地の情報を素早く取得しながら公共交通機関を利用した移動をすることもできるようになります。
乗客のデータを一部デジタル管理するという案もあり、これによって趣味や好みが一致する人物同士を近くに配席するという工夫を盛り込むことも可能です。これも少人数での旅行や、恋愛面におけるマッチングに活用でき、新たなサービスを作る基盤になり得ます。
観光業のデジタルトランスフォーメーション取り組み事例
実際に観光業者はどのような形でデジタルトランスフォーメーションを活用しているのでしょうか。大手旅行会社を筆頭に、既にDXを活用する事例はいくつか見られています。その詳細をかんたんにご紹介しましょう。
JTBによる新会社「グッドフェローズJTB」の創設
大手旅行会社JTBでは、新会社のグッドフェローズJTBを立ち上げてデジタルトランスフォーメーションの活用にあたっています。これにより、3密回避や非接触、自動化といった現在のニーズに応えられる支援策の展開を開始しました。
具体的には、最新の施設運営情報をリアルタイムで旅行者に伝えること、ホテル側が非接触決済に利用できる端末の無償提供等を実施中です。また、感染症が発生した際には、入場証明済みデータを販売事業者に提供することで、速やかに接触者の特定を行えます。
トリップアドバイザーによるVR旅行サービスの展開
トリップアドバイザーでは、オンラインツーリズムの一種である「VR旅行」を専門に行うキャンペーンを実施しています。この売上はすべて現地ガイドに寄付されることになっており、貴重な旅行資源を守るための防波堤として機能するサービスです。
まとめ
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、存在するデジタル技術を活用することにより、新しいビジネスモデルを創出するという概念です。AIやIoTを駆使した旅行支援、あるいはオンラインツーリズムのように新しい形の旅行の実現にDXが貢献しています。
既にJTBやトリップアドバイザーのような大手企業・サービスがデジタルトランスフォーメーションを活用中です。コロナ禍やコロナ後における新しい旅行を発展させる上で、カギを握る存在となることは間違いありません。
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